特集/九州だし紀行 美味しさの源を訪ねて古くから親しまれてきた食文化の原点「だし」。
南西日本では夏の味覚として親しまれる焼きあごは、縁起のいい食材として珍重されています。黄金色のあごだしは、「あごが落ちるほど美味しい」からその名がついたとの諸説もあるほど。一本筋の通った味わいが魅力なのです。

まずは、昔ながらの製法を続ける長崎の生産者を訪ねました。水揚げされたあごは、鮮度が落ちないうちに水洗いして塩分を取ります。次に、炭火でこんがりと焦げるくらい腹部を焼くことでうまみを凝縮、焼き上がったら乾燥させます。かつてこの季節になると、家の軒先では七輪が並び、焼きあごの香りに包まれていたとか。「ここまで手のかかる焼きあごをだしとして使うわけだから、日本の食文化は贅沢だね」と当主・河邉も感慨深い表情をうかべていました。

▲平戸・生月漁港で水揚げされたあご(飛び魚)。


▲あごはじっくりと香ばしく焼かれる。

▲一匹一匹丁寧に手作業で網に並べじっくりと焼き上げる。

あご漁は、人間の想像を超えた自然界の神秘そのもの。
港では、ちょうどあご漁から戻ってきたばかりの活気みなぎる水揚げに遭遇。団長によると、本日の収穫はトロ箱40箱分。焼きあごに向いているのは脂分が少ない小とび。あごだしの真骨頂ともいうべき澄んだスープの秘密はここにあったのです。

翌朝五時半、あご漁の乗船を前に緊張が高まります。漁は、「二艘びき船びき網漁法」。つまり二艘の両後方に網を張り、網がいっぱいになるまで船を走らせ魚を網に集めるのです。港からおよそ二キロ。「停泊」の合図とともに、漁師は激しい横揺れをものともせず、一斉に網を下ろします。およそ一時間後。朝日を浴びてキラキラと輝くあごが網の中にぎっしり。大海原をまるで放たれた矢のように一直線に飛んでいくあごの姿が目に焼きついています。

北風にのってあごが姿を見せるのは八月下旬から十月初旬まで。エラの部分が赤い「紅をさした」あごが現れると、漁も終わりという合図。それでも「北か北東の風が吹かんば。波の高い荒れた時でないと捕れん」というのですから、ごくごく限られた

▲上から、角とび、丸とび、そして脂肪分が少なく、だしには最適な小とび。

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